自己紹介

つぶやくことなんてない

自己分析はNGワードです

 自分の長所を20文字以内で書く必要に迫られている.20文字だから最低でも一つ書けばよいのだが,それがどうにもかけずに何十倍もの文章を今ここに書いている.

 「ES 長所」で検索しよう.現代人の悪い癖である.大手人材会社のサイトには迷える就活生のためにご丁寧な指南がある.これを自分になんとか適用するしかあるまい.「忍耐力がある」「素直」「行動が早い」云々.「忍耐力がない」「素直じゃない」「行動が遅い」云々.全部否定語に直せば素直に受け入れられるのだが...

 おそらく,この手の質問は多くの人が同じ状況に陥るのではないか.だからこそそういうサイトが設けられているのだ.そう思いたい.なまじ優秀な大学に通ったせいか,他人の有能さに驚いてばかりだ.普段から他人に対してこういう見方をしている時点で嫌になるのだが,だいたい自分とおんなじレベルの考え,行動を持っているだろうと評価していた人でも,ある瞬間に自分が想像もつかないような考えを出したり,とてつもない思慮深さを見せたり,驚くべき一芸を持っていたりする.そのたびに自分の浅ましさを痛感するとはいかないまでも,なにか無力感を感じたりする.おろか、裏切られた気分にさえなる.考えてみればその感情が恐ろしい.彼らもこの20文字で筆を止めて,検索を頼り落胆したりするのだろうか.たぶんそうなんだと思う.自分では思ってもいないことが他の人にとってはすごいことだったりする.そういうことが自分にもあればと思うのだが.たぶんこの後のことも考えて,長所+それが現れているエピソードも考える必要があるだろう.その場の質問を凌げるきれいな嘘がつけるほど達者な言語運用能力は持ち合わせていないので,なにかエピソードを想起して考えるべきなのだと思う.しかし,そのあとには「趣味・特技」欄も控えている.手強い.もう少し時間がかかりそうだ.

 研究や就活をしている(しているのか?)と,人の話を聞いて質問する義務が発生する場面が多い.ところがなかなか手を挙げられない.というのも,些末な疑問はとめどなく生じるのだが,クリティカルでないと思って却下することが多い.なんでそんなこと聞くのとか,自分の中で重要な指摘だと思って質問しても,後でよく考えると自分の思い違いであることが多いからだ.しかし月並みなことをいうのも憚られ,結局,分かった風な,かつ聞きたくもないことを発言してしまう.自分の中の月並み事項はまず発現候補から除外される.人前で普通のことは言わない.それが第一の価値になって,そのくせ結局変な発言しかできていないという最悪なパターンだ.他人の評価を気にしている故だろうか.この期に及んで頭がいい振りをしているのは本当にあさましい.無知を晒すことは禁じられてはいないはずだ.常識の範囲内でなら.

 大学に入ってすぐの時期.この時は難関の受験戦争を突破した実績を引っ提げて,向学意欲が盛んな人が結構多かったように思う.このころ,講義でいつも前の方に座り,授業を止めてまで質問してくる人がいた.この質問というのが,なんでそんなこと聞くのとか,そんなことだいたいわかるだろと思ってしまうような内容で,当時の僕は冷笑と呆れに近い感じで彼の背中を眺めていたと思う.授業止めて迄聞くことかなあ?てなかんじで.僕が今思ったことは,自分に足りないのは彼の姿勢なんじゃないかということ.当時の僕から見れば彼の質問は些末で理解不足の露呈だったと記憶しているが,彼は衆人の前で無知を晒すことによって,自分の知らなかったことを知り,着実に成長していた.その行動は彼にとって確実にプラスに働いていた.おっと,この話,月並みだな.却下.結局大したことは言えない.予防線である.

でもこの話に関してはそういう,少し「自分勝手」なことをもう少しやるべきなのかなあなんて考えたり.

もちろん,常識の範囲内で.